夏木ひつじです。
本日はプリキュア史上に残るカオス回「Yes!プリキュア5GoGo」第9話「名探偵こまち登場!」をお送りします!
これは、ナッツハウスを襲ったある悲劇の話・・・。
※この回はミステリー要素が(ほんのちょっとだけ)含まれていますが、本項では最後の結末まで書いておりますので、ご了承の上でお読みくださいませ。
事の発端は、かれんさんがセレブ堂の季節限定いちごのスペシャルケーキを買ってきたことでした。
新装開店したナッツハウスの開店祝いとして、このケーキを用意してきたのです。
そんな中、こまちさんが推理小説を読みながらやってきて、いつものメンバーが集まりました。
3階の部屋に集まり、みんなでケーキを囲みます。
まずは事件当時、ナッツハウスにいた人々を見ておきましょう。
【登場人物紹介】
ココ(左)・・・サンクルミエール学園教諭
ナッツ(右)・・・ナッツハウス店主
夢原のぞみ・・・サンクルミエール学園2年生
夏木りん・・・サンクルミエール学園2年生
秋元こまち(左)・・・サンクルミエール学園3年生
春日野うらら(右)・・・サンクルミエール学園1年生
水無月かれん・・・サンクルミエール学園3年生
シロップ・・・運び屋
かれんさんがじいやに取り寄せてもらったという限定ケーキを前にして、みんなは感嘆の声をあげました。
シロップは生唾を飲み込み、その背中では相棒のメルポが顔を出しています。
メルポ・・・シロップの相棒
のぞみがケーキナイフを手に取り、いよいよカットがはじまります。
「えっと・・・1、2、3、4、5、6、7、8。・・・8人だから8等分だね」
のぞみが8「等分」などという言葉を使うと、それだけで頭が良くなったように見えるから不思議です(笑)。
ケーキを切り分けると、かれんさんが思い出したように言いました。
「あ、そうだ! お皿」
「紅茶も淹れなきゃ」
「ああ、手伝いますよ」
そう言うと、かれん・こまち・りんちゃんの3人は連れ立って階段を降りていきました。
「なにか音楽でもかけません?」
「あ、いいね!」
「それじゃあCDラジカセがいるな。たしか部屋にしまってあったな。持ってきてあげるよ」
うらら・のぞみ・ココの3人も部屋を出ます。
「シロップも行こうよ!」
「音楽なんていらないだろ・・・」
そう言いながらも、シロップは物欲しそうにケーキを眺めつつのぞみについていきました。
そこへ、「すいませーん」と階下からお客さんの声。
階段を降りかけていたココが、ナッツにお客さんが来たことを告げると、ナッツはみんなと一緒に下へ降りていきました。
こうして、この部屋からはだれもいなくなったのです。
しばらく後、全員はそれぞれの用事を終えてケーキの置いてあった部屋へ戻ってきました。
部屋には音楽がかかり、紅茶やケーキプレートが並べられ、華やいだ空気が流れています。
「さてと、みなさん揃ったようですので、いよいよ主役の登場です!」
りんちゃんが進行役となり、みんなの注目が集まる中、主役であるケーキの箱が開けられました。
――――しかし。
箱の中にはなにも入っていません!
場にいる全員大ショック!
あまりの衝撃的な事態に、ナッツハウスに悲鳴が響きわたります!
雷鳴が轟き、雨が降りだし、ナッツハウスはさながら孤島の洋館のよう・・・・・・。
一方、こちらはエターナル。
アナコンディに叱られていたスコルプさんに、ブンビーさんが声をかけます。
「すぐそこのケーキ屋で買ってきたんですよ」
ブンビーさん、気が利く差し入れです。
「お前、勤務中にこんなもの食べていいとでも・・・」
「もう少し気楽にやりましょうよ、スコルプさん」
ブンビーさんはそう言うと、ケーキを一口で頬張りました。
「プリキュアだって人間です。あのチームワークが崩れる時がきっと来ますよ。もっと肩の力を抜いて、チャンスを待たなきゃ」
スコルプさんは呆れるやら感心するやら。
奔放なブンビーさんを見送りました。
・・・そしてふたたびナッツハウス。
ケーキが忽然と姿を消してしまったことに、みんな動揺しています。
「俺はずっと店にいたが、怪しい奴はだれも入ってこなかった」
「つまり、外部の人間が持ち去ったわけじゃないってことか」
だれもが悄然としている中、ナッツとココの言葉が響きます。
すると、
「みなさん、ごきげんよう」
なにやらプリンセスのような挨拶を述べながら、どこかへ行っていたこまちさんが戻ってきました。
「なになに、その格好!」
「名探偵の衣装。いつか着てみたいと思って持ち歩いてたの」
「そんなもん持ち歩かないでください・・・」
「みなさん、今日ここにお集まりいただいたのは他でもありません」
「さっきから集まってるんだけど・・・」
「ケーキを切り分けてからお皿やお茶の準備をして、ふたたび箱を開けるまでの5分間、この空白の5分間に犯行は行われました」
「こまちさん、なりきってる!」
「ときどき、こまちがわからなくなるわ・・・」
「推理小説の読みすぎだね・・・」
「外部の人間がだれもこの部屋に入っていないということは、ケーキを食べた犯人は、この中にいます!」
ホームズ風の衣装を着てノリノリのこまちさんは、ケーキがなくなった空白の5分間に各自どこでなにをしていたのか聞き取り調査をはじめました。
みんなのアリバイを調べるわけです。
「ちなみにわたしの場合、ずっと台所で紅茶を淹れてたわ」
「あ、わたしもいっしょでしたよね」
「ってことは、わたしとこまちさんは犯人から外れたと。よかったぁ~」
「でも、りんさん。たしかあなた途中で台所から出て行きましたよね」
たしかに、りんちゃんはかれんさんに呼ばれて部屋の外へ出ていっていたのです。
「あのままこの部屋に戻ってきて・・・」
「犯人は、あなた・・・かも!」
ビシっと指さすこまちさん。
しかし、いくらなんでもそれだけで犯人扱いは無理があります。
以下、りんちゃんの弁明です。
「わたしはかれんさんに呼ばれていっしょにお皿を選んでたんです。で、お皿の趣味でちょっと・・・ちょっとね・・・意見が分かれちゃって」
そこでかれんさんは、もう一度選びなおすからと一人で部屋を出て行ったのでした。
「もしかして、かれんさんあのままこの部屋に来て・・・」
「犯人は、かれんさんですね!」
今度はりんちゃんがかれんさんを指さします。
「あのねえ、わたしはお皿を探しに行っただけなの。わたしを疑う前にみんなのアリバイも聞かせてほしいわ」
そう言うと、かれんさんは隣にいたうららを見ました。
「かれんさん、わたしを疑ってるんですか!?」
「たしかにわたしは食いしん坊だし」
「甘いものが大好きだし、いちごのケーキには目がありませんよ」
「でも、みんなの分をひとりで食べるなんて、わたしがそういう人間に見えるんですか?」
「・・・・・・ひどい」
うららの
「わたしは、のぞみさんやシロップといっしょにずっとCDを探してました!」
演技をやめたうららは、そこでなにかを思い出したようです。
「そういえばあのとき、途中でシロップとのぞみさん、いなくなりましたよね」
「ということは、もしかして・・・」
「犯人はのぞみさんとシロップの共犯でしょ!」
これにはのぞみとシロップも猛抗議。
のぞみは他のCDを見に行っただけ、シロップはメルポがいなくなってしまったので探しに行ったのだと、妖精の姿になって釈明しました。
そのときシロップはナッツハウスの店舗のほうへメルポを探しに行ったのだそうです。
そこで、ココと会ったと言いました。
「うん、たしかに店で会ったよ」
ココの証言もそれを裏付けます。
それに待ったをかけたのはこまちさんでした。
「ちょっと待って。シロップさん、あなたたしか空を飛べましたよね?」
「3階でケーキを盗み、空を飛んでどこかにケーキを隠す。そして店に戻り、ココさんにわざと姿を見せた・・・」
「空を飛べるあなただからこそできる、完全犯罪です!」
「そんな手の込んだことしないロプ!」
みんながシロップのことを疑わしい目つきで見つめる中、必死に弁解しています。
「そういえば、メルポを探して店に来たとき、ナッツはいなかったロプ!」
「犯人はナッツロプ!」
今度はナッツに注目が集まりますが、ナッツも妖精の姿に戻って反論します。
「ふざけるなナツ! ナッツはたまたま倉庫に在庫を調べに行ってただけナツ!」
「たしかに、倉庫から物音がしてました」
うららの証言で、ナッツの疑いも一時棚上げとなりました。
なんだかややこしいこの5分間。
かれんさんの提案で、階層ごとに整理してみることにしました。
ケーキの置いてあった3階にはだれもいません。
2階は台所にこまちさん。
リビングにりんちゃんとかれんさん。
1階には店内にココとシロップ。
外にナッツ。
階段の下にはのぞみとうららがいました。
「こうなると、みんなアリバイがあるようでないわね。一度はひとりきりになっているときがある」
「それだったら、こまちさんだって怪しいと思います」
「かれんさんが席を外しているとき、りんさんの隙をついてケーキを食べに行くことだってできるじゃないですか!」
「あのね、わたしは探偵なんだからするわけないでしょ、そんなこと」
「ごまかすために、わざと探偵の格好をしてきたってことも――――」
「ありえません!」
こうして犯人探しは暗礁に乗り上げました。
犯人は食いしん坊であるとの推理からのぞみとうららに疑いの目が向けられたりなど、根拠も薄いまま人を犯人呼ばわりしていきます。
お互いがお互いを疑りあい、みんなの心は疑心暗鬼に。
見かねたココが口を開きました。
「なあ、もうやめないか」
「友だちを疑うなんて悲しいことだよ。もうこんな意味のない醜い争いは終わりにしよう」
「いいかい、全員目をつぶって。そして、ケーキを食べた人は手を挙げてほしい」
「僕にだけ正直に言ってくれたら、あとはそれでいいじゃないか」
教師らしいココの提案に、みんなは心が晴れたような澄んだ目を向けます。
だれもがこの不毛な犯人探しに疲れていたのでしょう。
ココの言うとおり、みんなは目を閉じて――――、
「――――って、目開けてるじゃないか!」
「醜い争いはやめようなんて急に言い出して、ちょっと引っかかるわ」
「そう、たしかに怪しい」
「ココはあのときなにをしてたの?」
今度はココが逆に追求される立場になりました。
あの5分間、自分の部屋でCDラジカセを探していたといいますが、それを証明できる人はいません。
「ココさん、犯人はあなたね!」
ココは妖精の姿になり、ジタバタと駄々をこねるようにしながら自分の無実を主張します。
しかし、もはやみんな、だれの言うことも信じません。
せっかく収まりかけた言い争いが再燃し、メンバー全員でお互いを疑りあい、犯人だと決めつけあう最悪の事態。
「どうしよう・・・ケーキ1個でこんなことになるなんて・・・」
「プリキュア解散の危機だよ・・・・・・」
「そいつは良かった!」
そこへ現れたのはエターナルのブンビーさんです。
なにもしなくても勝手に仲たがいしてくれた今こそ、プリキュアを倒す最大のチャンス!
「ああーーー!!!」
ブンビーさんの口のまわりに何かが付いているのを、のぞみが見つけました。
全員、ブンビーさんの顔に注目します。
「なななんだよ、私の顔になにか付いているのか?」
「付いてるじゃない! 口の横にクリームが!」
「これはさっき食べたケーキの・・・」
わなわなと震えるプリキュアたち。
ブンビーさんには何がなんだかわかりません。
「わたしたちの大事なケーキを食べたのは、あなただったんですね・・・」
「私!?」
「どうせわたしたちを仲たがいさせることが目的だったんでしょ・・・」
「おかげでわたしたちがどれだけイヤな思いをしたことか・・・」
「せっかくのセレブ堂のケーキを一人で食べるなんて・・・」
「そう、ちょっとだけならまだしも、全部食べちゃうなんて・・・」
「アンタもずいぶんとセコいことしてくれたわね・・・」
「だから全然違うって・・・・・・」
さっきまでいがみ合っていた5人ですが、怒りをパワーに変えてブンビーさんにぶつけます。
「みんな、変身よ!」
ホームズの衣装を脱ぎ捨てたこまちさんの号令で、5人はメタモルフォーゼ!
Yes!プリキュア5!
が、変身しているあいだにブンビーさんは空へと逃げていました。
「だからこれは、私が元気のないスコルプを励まそうとして買ってきたモンブランとロールケーキと・・・」
「え?」
逃げながら叫ぶブンビーさんの言葉に、キュアドリームがなにかに気が付きました。
しかし、他の4人はブンビーさんの言葉など聞いていません。
キュアレモネードのプリズムチェーンがブンビーさんを捕らえ、
キュアミントのエメラルド・ソーサーが襲います!
「本当に違うんだってば~!」
Yes!
これで事件は一件落着・・・とはもちろんいかず、のぞみはみんなにブンビーさんの口に付いていたクリームの色が違っていたことを伝えました。
無実の人をおとしめてしまい、悪いことをしてしまったと反省する5人。
しかし、こうなると真犯人がだれだったのかがわかりません。
そんな中、だれかの手紙が届いたようで、メルポが声をあげました。
なんだか様子のおかしいメルポでしたが、シロップが手紙を受け取ります。
それはパルミエ王国にいるミルクからの手紙。
育てていた種が芽を出して、大きく育っているということです。
と、のぞみが何かに気が付きました。
便せんの裏にクリームが付いていたのです。
のぞみは指にとってペロッと舐めました。
「間違いない! セレブ堂のスペシャルケーキのクリームだよ!」
そーっとその場を離れようとするメルポを、シロップが捕まえます。
「そういえばお前、あのとき急にいなくなったよな・・・」
「ということは、メルポさんが犯人?」
しかし、メルポは物を食べたりはしません。
メルポが言うには、食べたのではなく隠していたのだそうです。
なぜそんなことを・・・と、みんなはふしぎに思います。
「お前、もしかして寂しかったのか」
シロップの言葉に、メルポはうなずきました。
そこでのぞみは気が付きました。
はじめに自分がメルポを数に入れず、ケーキを8等分したことで、メルポを仲間外れにしてしまっていたのです。
のぞみがメルポに謝り、これで一件落着。
隠していたケーキをメルポが取り出して、めでたしめでたし・・・・・・とはならず、
ケーキが一切れありません!
だれかがこっそり食べてしまったのでしょうか。
ふと見ると、のぞみがそーっと部屋から出ていこうとしています。
思い返してみれば・・・・・・、
「ちょっとだけならまだしも、全部食べちゃうなんて・・・」
「間違いない! セレブ堂のスペシャルケーキのクリームだよ!」
のぞみには、いくつもの怪しい言動があったのです。
逃げ出すのぞみを4人が追いかけ、めでたしめでたし(?)となりました。
さて、この回は一体なんだったのでしょうか!
探偵のコスプレをしてノリノリのこまちさんに、お互いを犯人扱いしあうメンバーたち。
途中で差し込まれる情況再現のVTR(?)や強引な推察から犯人を断定するさまなど、コミカルでありながらも全体にサスペンス風味を漂わせるアンバランスさが見事としか言いようがありません。
ブンビーさんには災難な出来事でした。
プリキュアたちはそれまでも根拠薄弱のままお互いを犯人だと決めつけていたのですから、弁明の機会が与えられなかっただけブンビーさんは不運です。
途中、のぞみが口にした「プリキュア解散の危機」といえば、「プリキュア5」の第23話「大ピンチ!悪夢の招待状」のことが思い出されます。
あのときはミルクがトラブルメーカーっぷりを遺憾なく発揮したことでプリキュア全員のこころがバラバラになってしまいましたが、今回そのミルクはいないにもかかわらず同じような事態に陥ってしまいました。
あのときは、みんなのあいだに大きな溝が生まれたところへカワリーノさんの策がうまく的中した形でしたが、今回はそれとは逆に、ブンビーさんがプリキュアの結束を強める手助けをしてしまった格好です。
もしもブンビーさんが口のまわりのケーキを拭っていたとしたら、一体どうなっていたんでしょうか・・・。
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