夏木ひつじです。
いつもは仲のいい友達同士でも、やっぱり思春期の女の子。
時にはケンカすることだってあります。
そこで、プリキュア同士でケンカしてしまうお話を特集しました!
記念すべき第一回は、「ふたりはプリキュア」第8話「プリキュア解散!ぶっちゃけ早すぎ!?」です!
この回は第8話。
まだまだ序盤のお話です。
なぎさとほのかが、まだ「雪城さん」「美墨さん」と名字で呼びあっていた頃のことですね。
学校の休み時間、友人の志穂と莉奈がおしゃべりをしているなか、なぎさは外をながめてドツクゾーンの連中との戦いを振り返りながら、ぼんやりとしていました。
(「初代」では、毎回なぎさの回想で先週のおさらいをするんです)
と、憧れの藤P先輩が渡り廊下を歩いているのを見つけました。
そこへほのかが走り寄ってきて、なんだか親しげに話をしています。
先ほどから志穂が呼びかけていることにも全く気付かないほど、なぎさはほのかと藤P先輩のことが気になっていました。
休み時間が終わっても授業に身が入らず、ふたりの関係ばかり考えてしまうなぎさ。
以前、ほのかにそれとなく彼のことを訊ねたときには「ただの幼なじみ」という回答が返ってきましたが、それでも気になってしまうお年頃なのです。
(幼なじみってことは、子どものころから近所に住んでたり、親同士も仲いいってことだろうな・・・)
(雪城さんって、頭もいいし、お上品だし、あたしと正反対)
(っていうか、あたしが男子なら好きになりそうなタイプ)
いつも活発ななぎさがぼんやりとしていることに、志穂や莉奈も不思議がっています。
授業が終わり、女子トイレでほのかに話しかけるなぎさ。
藤P先輩とのことを聞きたいのですが、久しぶりに会えてイチャイチャしはじめたメップルとミップルにジャマされてしまいました(笑)。
「ミップル~」
「メップル~」
「会えない時間が愛を育てるメポ!」
「人に見られたらヤバいって! 早く戻ってよ」
「なぎさ、キミにも恋をする者の気持ちがわかるはずだメポ」
「どうして? どうしてミポ?」
「実はメポ・・・・・・」
と、ミップルに耳打ちするメップルをなぎさがあわてて止めようとするところを、
「それより美墨さん、私になにか話があったんじゃ・・・・・・」
ほのかに訊かれますが、メップルたちにペースを乱されてしまったためか、結局なにも言わずにトイレから出ていってしまいました。
その日の夕方、家で勉強をしているほのかと、食事をしているミップルは話をしていました。
というか、ミップルののろけ話を聞かされている格好です(笑)。
ミップルはメップルに対する想いをひとしきり語ったあと、
「ほのかは好きな人いないミポ?」
と、訊ねました。
「好きな人?」
「別にいないけど?」
「でも、なぎさは違うみたいミポ」
「え?」
「藤Pって人が気になってるらしいミポ」
「藤P?」
そこへ、おばあちゃまが部屋の外からほのかに声をかけました。
ミップルはあわててコミューンの姿に戻ります。
おばあちゃまは宿題をしているほのかに紅茶を淹れてもってきてくれたのでした。
紅茶を置いて部屋から去り際、
「ああ、そういえば・・・」
と、ほのかに言いました。
「あのお友だち、元気かい?」
「お友だち?」
「ほら、前に来た明るくて元気な」
「ああ、美墨さん」
実はこの話の少し前、第5話の中で、なぎさがほのかの家を訪ねて一緒に一日を過ごしていたのです。
そのときには、お嬢様育ちでおっとりしているほのかと、頭よりも体が先に動くタイプのなぎさでは、行きたい場所も食べたい物も欲しい服も、なにもかもがバラバラでした。
それでも一日一緒にいた結果、ほのかは自分とは違う価値観を持つなぎさと一緒にいることを心底楽しんでいたのですが、一方のなぎさはほのかに対してぎこちなさというか、一緒にいることのやりにくさを感じていたのです。
「そうそう。あのときのあなた、とっても楽しそうだったから」
「わたし、楽しそうだった?」
「ええ、とっても」
「いいお友だちができて、良かったわね、ほのか」
「友だち・・・か・・・」
ほのかは、うれしそうにつぶやきました。
さて、場面は美墨家に移ります。
宿題をしていたほのかに対して、なぎさは何をしていたかというと、
ほのかと藤P先輩の間柄を想い悩みながら部屋の中を転がっていました(笑)。
そこへ、ノックもなしに部屋に入ってきた弟の亮太と文句を言い合い、姉が弟にコブラツイストをかけて弟が母に泣きつくといういつもどおりの美墨家です。
翌朝、なかなか寝られなかったのか、大あくびをして通学路の信号を待つなぎさ。
そこへ、
「美墨さ~ん」
と、呼びかける声がしました。
振り向いたなぎさが目にしたのは、
美男美女の幼なじみコンビです。
そのまま3人で登校することになりましたが、なぎさは藤P先輩の前で緊張するわ、ほのかと藤Pの関係が気になるわで、まともに話すこともできません。
しかも、ほのかと藤P先輩の会話はなぎさの知らないことばかりで、いかにもふたりだけの世界といった感じなのです。
そんななぎさにほのかが視線を向けると、
真っ赤になって顔をそむけるなぎさでした。
そこで、ほのかはなにか考えているようなしぐさを見せます。
「あ」
「どうした?」
「そういえば、ふたりのことちゃんと紹介してなかったなって思って」
(え?)
「こちら、同じクラスの美墨なぎささん」
「ど、どうも・・・」
「こちらは――――」
「男子部3年、藤村省吾。よろしく」
「みんなからは、藤Pって呼ばれてるの」
「藤P・・・?」
「ほのか、藤Pって言うなって言ったろ。もう小学生じゃないんだから」
困り顔の藤P先輩とクスクス笑うほのか。
そこへ、
「おっはよー、藤P!」
と、ひとりの男子が藤P先輩の体に飛びかかります。
彼は同じサッカー部の木俣くん。
藤Pと仲がよく、お互いに軽口を言いあっています。
ほのかとも顔見知りのようで、あいさつを交わしていました。
こうなると、ひとりだけ部外者の感が強いなぎさは、この空気にまったく入っていけません。
そうしたことに気が付かないほのかは、
「でも良かったわ。美墨さんに藤村くんを紹介できて」
「え?」
「だって、前から話したいと思ってたんでしょう?」
「「ん?」」
ほのかの何気ない言葉に、男子ふたりもおしゃべりをやめてこちらに注目しました。
思いもかけず自分の気持ちを先輩に知られることになってしまったなぎさは、声を荒げます。
「ちょっと雪城さん!」
なぎさの剣幕にぽかんとする3人。
話に夢中だったサッカー小僧のふたりは状況を理解していないようでしたが、なぎさにはそんなことを冷静に判断する余裕はありません。
(そんなの・・・)
(そんなの・・・)
「ありえない!」
なぎさは逃げるようにその場を駆けだしました。
ひとり河原を歩くなぎさに、ほのかが追いつきました。
「待って、美墨さん! わたし、なにか・・・」
「余計なことしないでよ」
「え・・・? わたしはただ・・・あなたと藤村くんが話せるきっかけができればいいと思って・・・」
「それがおせっかいだって言うのよ」
「勝手に決めないでよ!」
「あたしがどうしたいかなんて、なんであなたにわかるのよ!」
「それとも自分の考えてることはいつも正しいとでも思ってるの!?」
「ちょっと無神経すぎるんじゃない!?」
「無神経って・・・」
「雪城さんなんかに、あたしの気持ちがわかるわけない」
「美墨さん・・・」
ほのかは昂ぶっているなぎさを落ち着かせようと、手を取りました。
しかし――――、
「もういいから放っておいて!」
「あなたなんてプリキュアってだけで、友達でもなんでもないんだから!」
言ってはいけないセリフを言ってしまったなぎさ。
すぐに後悔の表情を浮かべますが、一度こぼれた水は元に戻ることはありません。
「そうね・・・余計なことだったかもね」
なぎさは、去っていくほのかを見送ることしかできませんでした。
その日の昼休み。
なぎさは校舎の屋上で志穂や莉奈と昼食をとっています。
しかし、なぎさのお弁当には何も手が付けられていません。
話しかけても上の空のなぎさに、
「なにかあったろ、おぬし」
志穂が妙な迫力でなぎさに迫ります。
そのとき、屋上の扉が開きました。
やってきたのはほのかです。
なぎさがバツの悪そうな顔をすると、ほのかはすぐに屋上から出て行きました。
「雪城さんとケンカでもしたの?」
莉奈が訊ねます。
「ちょっとね・・・」
なぎさは屋上の縁に寄りかかり、ため息をつきました。
「なんであんなこと言っちゃったんだろ・・・」
空に向かってつぶやきますが、その答えは自分でもわかりません。
放課後、ラクロス部の練習を終えたなぎさたちは、夕日の差し込む昇降口で靴を履き替えていました。
「なぎさ、あのさ・・・もしもなにか・・・」
志穂が言いかけたところへ、
「美墨さん」
と、ほのかが声をかけました。
莉奈が気を利かせて、志穂と一緒に先に外へと出ようとします。
「あのさ、なぎさ」
莉奈が振り返って言います。
「悩み事があるならなんでも言いなよ。あたしたちは何があっても、なぎさの味方だからね」
「そうだぞ。あたしたちは友達だろ」
志穂もそう続けました。
元気のないなぎさを励ますための言葉ですが、今のなぎさとほのかにとっては、とてつもなく痛い言葉です。
志穂と莉奈が外へ出たところで、ほのかが切り出しました。
「あの・・・朝のことはごめんなさい」
「あれからいろいろ考えたの・・・」
「わたしに、これを持ってる資格ないなって・・・」
「え・・・」
「このままだと、またあなたに嫌な思いさせちゃうかもしれないし」
「あの・・・」
「それに、やっぱりこういうのって、お互いに信頼しあえる人のほうがいいと思うし・・・」
「だから・・・」
そう言って、ほのかがなぎさに手渡したのは、眠っているミップルでした。
「僕たちが眠っているあいだにそんなことがあったメポか!」
怒っているのは、なぎさの部屋のぬいぐるみ置き場に放り込まれたメップルとミップルです。
今すぐほのかに謝ってこいというメップルですが、なぎさも自分自身の気持ちがまったくわかりません。
なぜあんなことを言ってしまったのか。
ほのかのことをどう思っているのか。
そして、自分はどうしたいのか。
気持ちに整理がついていないのです。
「だったらその手帳に自分の気持ちを書いて整理してみたらどうミポ?」
その手帳とは、第6話で「石の番人」からもらったプリキュア手帳です。
これは光の園の力がないと読むことができない秘密の手帳なので、だれにも読まれることはない、自分の本当の気持ちを素直に書けるはずだとミップルは言います。
「本当の気持ち・・・・・・」
そう言って机に向かったなぎさは、
ありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえない
「なぎさが壊れたメポ」
一方の雪城邸。
こちらでも、ずっとカバンに入れていたプリキュア手帳をミップルに返し忘れてしまったことに気が付きます。
そしてほのかは机に向かい・・・・・・。
翌朝。
どうにかしてほのかに謝らなければと思っているなぎさは、少し不自然な笑顔を浮かべながらほのかに話しかけました。
「ゆっきし~ろさん」
朝の昇降口、お昼休みのお弁当の誘い、放課後の掃除の時間etc……。
なんとかほのかと会話しようと試みますが、なにかと理由を付けて避けられてしまいます。
結局ほのかに謝ることができなかったなぎさがとった行動は、
神頼みでした。
そこへ現れた邪悪な気配。
襲ってきたのはドツクゾーンのゲキドラーゴです。
そのとき、ほのかがため息をつきながら神社の前を歩いていました。
そこに、なぎさの悲鳴(というか叫び声)が聞こえてきて、ほのかは神社の境内へと入っていきます。
そこで見たのは、散乱したなぎさのカバンの中身とメップルとミップル。
そして宙吊りにされたなぎさの姿でした。
「美墨さん!」
「雪城さん!?」
「後ろ!」
振り向いたほのかを、ゲキドラーゴの攻撃が襲います。
とっさにカバンを盾にして防ぎますが、なぎさと同じように中身が散乱してしまいました。
変身もしていないのに物凄い勢いで叩きつけられましたが、ほのかはすぐに立ち上がります。
さすが、制服着ててもむちゃくちゃタフですね。
植物と融合して木のバケモノとなったゲキドラーゴが高笑いをしながら、メップルとミップルを拾い上げました。
そこへ、なぎさがラクロスのクロスを振るってゲキドラーゴに一撃!
ひるんだゲキドラーゴが手から放したメップルとミップルを、ほのかがナイスキャッチします。
「早く! 早くメップルを!」
プリキュアに変身するには、ふたりがそれぞれの妖精を手に持っていなければなりません。
しかし、ゲキドラーゴは枝をしならせてほのかを攻撃し、メップルを渡すことを妨害します。
ほのかは機をうかがいますが、プリキュアに変身していないままでは敵の攻撃をかわすだけでも一苦労。
「なにやってんの! 早く早く!」
「早くって言ったって!」
「モタモタしな~い!」
「モタモタってあなた!」
ゲキドラーゴの攻撃をかいくぐり、ほのかはなぎさにメップルをパスします。
「モタモタなんか、してません!」
今度はなぎさがナイスキャッチ!
こうなればこっちのものです。
ふたりは手をつないで、デュアル・オーロラ・ウェーブ!
ふたりはプリキュア!
闇の力のしもべたちよ!
とっととお家に、帰りなさい!
「ちなみに、わたしモタモタなんかしてませんから!」
決めゼリフのポーズを決めたまま、ホワイトはしっかりと反論します。
「もう! 言葉のアヤじゃない。細かいこと気にしない!」
「それに! 自分の考えてることがいつも正しいとも思ってません!」
「今そんなこと言ってるときなの!?」
「やっぱりこういうことはちゃんと話し合わなきゃ!」
「話し合いで解決しようなんて、優等生の考えそうなことだわ!」
戦いそっちのけで口論をはじめたふたりに、ゲキドラーゴが激怒しました。
「オレ無視するな!」
ふたりは攻撃をかわしながら、なおも口論を続けます。
「あなたね、話し合いはお互いを知るために大切なことでしょ!?」
「やっぱりあたしたちって正反対!」
「そうね! 全然違うわ!」
「全然違うわね!」
「違いすぎるのよ!」
「腹立つくらいね!」
「ウガァァァアアア!!!」
と、雄叫びをあげながら物凄い形相で攻撃を繰り出すゲキドラーゴに、
「うるさい! 今だいじなお話中!」
ふたりのプリキュア・マーブルスクリューが炸裂!
ゲキドラーゴを撃退します!
闇の力も晴れて一件落着。
・・・ですが、ふたりはつないでいた手をさっと離すと、飛び散らかした荷物をまとめ、そそくさと帰っていきました。
その夜、雪城邸。
月明かりのなか、ほのかは縁側でおばあちゃまと話をしました。
「どうかしたのかい?」
「ちょっと、ケンカしちゃって・・・やっぱり合わないのかな・・・」
「ほのかはどうしたいんだい?」
「ほのかがどうしたいのかが、だいじなことなんじゃないかしら」
「合ってるか合ってないかは二の次。ほのかにとってその人が大切な人なら、なおさらね」
「・・・おばあちゃまには、なんでもわかっちゃうんだね」
「そりゃわかりますよ、だいじな孫娘のことですもの」
そして、美墨家。
なぎさは食器片付けの手伝いをしながら、お母さんと話します。
「はぁ~、どうしてこうなっちゃうのかな・・・」
「どうしたの?」
「仲直りしようと思ったのに、またカーッとなっちゃって。ああ、もう最低ってカンジ・・・」
「ケンカをすることは悪いことじゃないでしょ」
「え?」
「だって、どうでもいい人とはケンカなんてしないでしょ」
なぎさもほのかも、家族との会話によって自分の中の本当の気持ちを知ることができたようです。
場面はふたたび雪城邸。
自室に戻ったほのかがプリキュア手帳を開けて光の園のライトを当てると、それが自分の物ではないことに気が付きました。
「これ・・・美墨さんの・・・」
お互いにカバンの中身を散乱させていたため、取り違えてしまったようです。
ほのかはあわてて手帳を閉じますが、少し迷ったあと、そっと手帳を開きます。
チョコレートケーキが好き。
玉ネギは昔からニガテ。
一方、なぎさも自分の部屋で、同じようにほのかの手帳を開いていました。
私と美墨さんは全然違う。
性格も考え方も価値観も違う。
彼女の考えてることがわからない。
体を動かすのが好き。
勉強は退屈。
草のニオイが好き。
私の靴下はちょっとクサイ。
なんちゃって・・・・。
良かれと思ってしたことで、彼女を怒らせてしまった・・・。
晴れた日が好き。
雨の日はユウウツ。
友だちが大好き。
ケンカは・・・・・・嫌い。
彼女と私は全然違う。
だけど、一緒にいると楽しい。
雪城さんのこと、もっと知りたい。
美墨さんと、友達になりたい。
私たちがずっとこのままなんて・・・・・・
ありえない!
翌日、あのときの河原で、なぎさはひとり芝生に腰を下ろしていました。
手の中には、ほのかの手帳があります。
「おはよう」
声をかけてきたのはほのかです。
「雪城さん・・・どうしてここに?」
「なんとなく」
そして、一冊の手帳を差し出しました。
「これ・・・なぎさの・・・」
「え?」
差し出されたものよりも、なぎさはほのかの言葉に驚いています。
「な・・・なぎさの・・・手帳でしょ?」
さらに口を開こうとしたほのかを制して、なぎさはほのかの手をとります。
あのとき振り払ったのと同じ場所で、今度は彼女の手をにぎりました。
そうして元気よく、
「行こ! ほのか!」
「うん!」
ふたりは手をつないだまま学校への道を走りだし、めでたしめでたしです。
いやあ、このケンカ回、とってもいいお話でした。
ですが、私の文章でこの話の魅力を伝えきれたかどうかはわかりません。
それというのも、この回は映像ならではの良さが特に多く詰め込まれているんですよね。
たとえば声優さんの演技。
ゲキドラーゴを無視して始まったなぎさとほのかの口論は凄い迫力でした。
特に、普段はおとなしくてやわらかい声で話すほのかが、ここでは叫ぶようにしてなぎさに本音をぶつけています。
プリキュアに変身するとやや凛々しくなる彼女の声ですが、今回は変身前のほのかの時からなぎさに対して力のこもった声をぶつけるのです。
一方、彼女たちのケンカをやさしく見守るほのかのおばあちゃまやなぎさのお母さんは、本当にやさしい声でふたりを諭していました。
仲直りのシーンでも、ほのかが「なぎさ」と下の名前で呼ぶことの決意と緊張感が見事に伝わってきます。
ほかに映像として特徴的なのは、陰影の使い方でしょう。
物語の序盤はいつもどおりの風景なのですが、なぎさのあの失言以降、どことなく暗い雰囲気が画面内に漂っています。
授業中、ほのかが教室でなぎさの言葉を思い返すシーンがあるのですが、窓から射し込む光がほのかのところまで届かず、くっきりとした影となってほのかの周囲を暗く落とし込んでいるのがとても印象的でした。
一方、志穂や莉奈と昼食をとるなぎさは日の当たる屋上にいますが、ほのかが屋上から逃げ出した先にはステンドグラスの窓が暗い影を落としています。
さらに、ほのかがミップルをなぎさに渡すシーン。
志穂と莉奈という「友達」がいるなぎさには夕日がまぶしく当たり、ほのかには届きません。
こうした光と影の演出は見事でしたね。
この第8話は、この回だけで成り立つものではありませんでした。
本文中にも書きましたが、第5話において、なぎさとほのかは趣味から考え方から好きなものまで、まるっきり違うということが描かれていますし、第6話に登場したプリキュア手帳も、この話を語る上で欠かせないアイテムになっています。
また、なぎさがこれまでの回でも事あるごとに口にしていた「ありえない」という口ぐせを、ほのかが手帳の中で使っていたことも大きなポイントですね。
特に第5話、ながさとほのかが初めて一日一緒に過ごした日のこと。
ほのかはなぎさのことをとても楽しい人だと思って、友達になれたとよろこびます。
しかし、なぎさの方は自分とは住む世界がまるっきり違うお嬢様のほのかに対して、どこか遠慮というか、温度差というか、志穂や莉奈と接するときとは違う、一種の壁を感じているようでした。
今回のケンカの直接の原因は、ほのかがおせっかいを焼きすぎたことです。
突然藤P先輩や木俣くんを紹介されて、なぎさにとって完全にアウェーの空気になってしまったことも一因でした。
ただ、これがもしも「友だちの友だち」という関係で紹介されたのだったとしたら、本来は明るい性格のなぎさですから、憧れの先輩がいたとしても話の輪に入ることはできたはずです。
しかし、この時点ではなぎさにとってほのかはただのクラスメート。
志穂や莉奈のような友人関係ではないのです。
一方、ほのかはなぎさのことを友達だと思っていますから、自分の友達である藤Pや木俣くんともすぐに打ち解けられると思っていたのでしょう。
第5話で描かれながらその回の中では明確な解決を示さなかったこのふたりの距離感の違いこそが、ほのかの過剰な配慮やなぎさの失言によるケンカを引き起こしてしまったのです。
さて、この「初代8話」ですが、プリキュアファンの間では「伝説の回」として広く知れ渡っています。
新番組「ふたりはプリキュア」がはじまって2ヶ月が経とうとしていたこのころ。
日曜朝の女の子向けのアニメ枠としては、4年間続いた「おジャ魔女どれみ」が終了し、「明日のナージャ」を経て、次にはじまるアニメはどんなだろうと、みんなが期待しながら見ていたわけですね。
そして「なんだか面白いアニメだぞ」と評価が定まりかけていたところで、この「伝説の回」が来たのです。
なんとなく距離が縮まりきらないふたりの関係からケンカに発展し、お互いの心の内をぶつけあう口論になり、相手のことをもっと知りたいという気持ちによって仲直りにいたる道すじ。
そして今まで以上に仲良くなっていくふたりの間柄を見事に描いたこのお話は、今日のプリキュア人気が決定付けられた回と言っても過言ではないと、私は思います。
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