夏木ひつじです。
さて、本日は講談社キャラクター文庫より出版されました「小説 ハートキャッチプリキュア!」の感想など書いていこうかと思います。
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小説 ハートキャッチプリキュア!
(著)山田隆司 (イラスト)馬越嘉彦
講談社キャラクター文庫
プリキュアシリーズが小説化されるのは初めてですね。
「プリキュアの小説版が出るなんて!」と驚いた方も多いと思います。
なにしろ女児向けアニメですので、今まで書籍として出版されていたのは絵本やマンガといったものばかりでしたから。
しかし、ニチアサ女児向けアニメの先達である「おジャ魔女どれみ」シリーズも、実は小説化されているんです。
その小説の著者の栗山緑さんが、なにを隠そう「小説 ハートキャッチプリキュア!」の作者である山田隆司さんなんです!
栗山緑は、山田隆司さんのペンネーム。
「おジャ魔女どれみ」シリーズや「ハートキャッチプリキュア!」では、シリーズ構成を山田隆司、脚本を栗山緑名義で書いていた人です。
この方のつくる物語は本当にすばらしいお話ばかりですので、私・夏木ひつじはもう読む前からワクワクして仕方ありませんでした!
ここでは、同じようにワクワクする人の楽しみを奪わないよう、お話の結末や物語の重要部分には触れずに、私個人の感想を書いていきたいと思います。
とはいえ、おおまかなストーリー展開や物語構成等についてはある程度触れることになります。
「自分はまだ読んでないのにそんなの知りたくない!」という方がいましたら、先に小説本編を読み終えてからここより下へ進んでくださいね。
なお、この記事はあくまでも小説作品についての紹介であるため、本編であるアニメを最終回まで見ていることを前提として書いています。
文中にはアニメ本編に関するかなりクリティカルなバレも含まれていますので、「ハートキャッチ」を最後まで見ていない方はぜひここで引き返してください!
それでは、これより「小説 ハートキャッチプリキュア!」について書いていきます!
この本の表紙を見て推察できますとおり、キュアムーンライトが本作の主人公になっています。
そして、物語の章立ても、
第一章 キュアムーンライトの誕生
第二章 キュアムーンライトの挫折
第三章 新しいプリキュア
第四章 キュアムーンライトの復活!
第五章 父よ
と、まさにムーンライトを軸にした構成になっています。
その内容は「ハートキャッチプリキュア!」のストーリーを、ゆりさんがプリキュアに選ばれた中等部2年生のころから時系列順に追っていくもの。
アニメではつぼみがプリキュアとなる時点からのはじまりでしたので、その3年前から話がスタートするわけです。
その物語を、ゆりさんはもちろん、薫子さんやダークプリキュアなどの視点から描いているのがこの作品の大きな特徴となっています。
それも単に物語をなぞるだけでなく、本編では語られなかったエピソードや設定などが続々と登場してきて、本当に読み応え十分です!
次に気になるのは、小説の対象年齢でしょうか。
「ハートキャッチプリキュア!」の放送開始からはすでに5年が経過していて、当時幼稚園の年長さんだった子が今や小学5年生になっています。
この本では、やや難しい単語が時おり出てくるものの、文章自体は平易に書かれていますので、小学校高学年ならば十分に一人で読み進められるでしょう。
お子様へのプレゼントとして買ってあげる場合には、手元に国語辞典などの用意があればなおいいですね。
プリキュアというアニメの小説ですが、内容自体はしっかりしていますので、活字に親しむいい機会だと思います。
それではここからは、各章ごとにおおまかなあらすじなどを書いていきます。
まずは第一章「キュアムーンライトの誕生」。
ここではアニメ本編では語られなかった、中学2年生のゆりさんがプリキュアになってからの砂漠の使徒との戦いを描いています。
そしてそして、アニメ本編で披露されていたゆりさんの身体能力の高さ(スナッキーを投げ飛ばしたり、ダークプリキュアの攻撃を素手で防いだり、プリキュアとともに併走したりetc……)、その秘密についてもこの章でしっかりと触れています。
アニメでのゆりさんの学校生活は、その学業成績ばかりがクローズアップされていましたが、この小説では彼女のズバ抜けた運動神経が存分に描かれているのがすごく新鮮で楽しめました!
「5」のりんちゃんや「スイート」の響など、いろいろな部活から助っ人を頼まれるプリキュアはいますが、中等部に入ったゆりさんが多くの勧誘の声の中から最終的に「あの部活」を選んだことに、ゆりさんの性格がよく表れています。
しかし、みなさまもご存知のとおり、アニメ本編でゆりさんは特定の部には所属していません。
彼女の運動能力の高さを考えれば、もしもあのまま部活動を続けていれば・・・と、ちょっと残念にも思ってしまいますが、そこは仕方のないところですね。
さて、本作ではアニメではなく小説という媒体であるからこそできることにもトライしています。
その筆頭となるのが、ゆりさんの入浴シーンではないでしょうか!
ゆりさんは妖精のコロンによってキュアフラワーの後継となるプリキュアに選ばれましたが、コロンが次のプリキュアを見定めるその過程で、お風呂に入るゆりさんの後をつけていたりするのです。
(コロンの名誉のために言っておきますが、後をつけることはしたが自分は紳士なので裸は見ていない、とのことです)
何者かの気配を感じて湯船から飛び出すゆりさんなど、このシーンは決してアニメでは放送できません(笑)。
逆に、これはぜひアニメーションで見たかったというのが、ゆりさんの初変身シーン。
アニメ本編では、ゆりさんの変身バンクが描かれたのは復活後のみで、このときは「ココロポット」というアイテムを使って変身しています。
つぼみやえりかなどが使っていた香水型の「ココロパフューム」ではないんですね。
ゆりさんのココロパフュームは、ダークプリキュアに敗れる間際にシプレに託され、その後つぼみの手に渡ってキュアブロッサムへの変身に使われているのです。
あの香水をシュッシュッと使って変身していくブロッサムたちのかわいいシーンが、この小説では中学2年生のゆりさんの変身で使われているんです。
著者の山田隆司さんによる想像力をかき立てられる文章で書かれてはいるのですが、やっぱりこのシーンはアニメで見たかった(泣)!
そんなこんなでプリキュアに変身し、砂漠の使徒と戦っていくゆりさんの姿がこの章では描かれています。
キュアムーンライトがなぜあれほど驚異的な強さを誇っているのか、そのルーツについてもここで明らかにされていますよ。
そして、ここではゆりさんだけでなく、薫子さんの視点で描かれることも多いんです。
キュアフラワーとして50年前に砂漠の使徒と戦い、デューンの力を封印した花咲薫子。
しかし、自身が経験した過酷な戦いを、月影博士の娘であるゆりさんに課したくないという複雑な思いを抱えています。
アニメでは描かれていませんでしたが、薫子さんが園長を務めているあの植物園に、ゆりさんのお父さんは職員として勤務していたのです。
旧知の間柄だけに、薫子さんはゆりさんがプリキュアになることに戸惑いがあるようです。
そこで、薫子さんはある行動に出て・・・・・・。
さて、お次は第ニ章「キュアムーンライトの挫折」のご紹介。
ここでは、ダークプリキュアの誕生からアニメ第1話の冒頭シーン・キュアムーンライトが敗れるまでが描かれています。
第一章では主にゆりさんと薫子さんの視点で話が進んでいましたが、こちらではゆりさんとダークプリキュアの視点から物語が動いていきます。
凄まじい強さで連戦連勝を重ねるキュアムーンライト。
地球攻略を任されているサバーク博士ですが、3幹部だけではどうにもならないと感じ、最強の戦士・ダークプリキュアをつくりだします。
アニメ本編では「ゆりの体の一部を使った」と説明されただけのダークプリキュアでしたが、ここではもっと詳しく誕生秘話が描かれています。
ダークプリキュアの背中の翼が、片翼しかないことの理由なども興味深かったですね。
そうして生まれたダークプリキュアは、サバーク博士を父として慕いますが、当のサバーク博士はダークプリキュアに対して父と呼ぶことを禁じます。
アニメでは、ダークプリキュアが父であるサバーク博士の愛情を求めていたことは、終盤までは伏線としてセリフの端々に現れる程度で、その思いはラストバトルで取り上げられたのみでした。
そんなダークプリキュアの心情が、ここでは大きく描かれているのが見どころのひとつでしょう。
そのダークプリキュアに最初に与えられた任務が、キュアムーンライトの正体を探ることでした。
当時の砂漠の使徒サイドは、キュアムーンライトについての情報が不足していたのです。
ムーンライトのことを調べようにも、クモジャキーたちでは殺気がありすぎて、後をつけようとしたところで感覚の鋭いキュアムーンライトにはすぐに気付かれてしまいます。
そこで、「こころを持たない人形」であるダークプリキュアにその任を命じたのでした。
ダークプリキュアは無事に任務を遂げ、サバーク博士の元へ帰還し、キュアムーンライトの本名を告げます。
――――月影ゆり、と。
その名を聞いたサバーク博士は・・・・・・。
そんな中、薫子さんはゆりさんに「プリキュアの試練」を受けさせるべきかどうか悩んでいます。
しかし、小説を読んでいる読者にはわかっていることですが、プリキュアの試練を受けるということは、ダークプリキュアとの決戦と、それによる敗北が近いことを意味しています。
アニメ第1話の冒頭シーンの戦いは、ムーンライトがプリキュアの試練を受けるためにプリキュアパレスへ向かっている途上でダークプリキュアに襲われたものでしたからね。
それがわかっている読者のもどかしさと、早く試練を受けてキュアフラワーのように強くなりたいと願うゆりさんの思い、そしてダークプリキュアのキュアムーンライトに対する嫉妬などが交錯しあい、物語は進んでいきます。
第三章は「新しいプリキュア」です。
パートナーの妖精を亡くし、変身能力を失ったゆりさんの精神状態を心配する薫子さん。
そんな中、息子夫婦が孫娘のつぼみを連れて、希望ヶ花市へ引っ越してきます。
アニメ本編の第1話ですね。
実はこれより前に、薫子さんがゆりさんの親友である来海ももかに様子を見てくるように頼むなど、もも姉との交流があることが明かされました。
薫子さんともも姉は、私の記憶する限りアニメ本編では接点はありません。
しかし、自宅が隣同士なのですから交流がないほうがおかしいですよね(笑)。
薫子さんも来海家のみんなも社交的な性格ですからなおさらです。
そうした本編では語られていない部分が、本編のストーリーをなぞることになるこの章以降ではたくさん出てくるんです!
キュアムーンライトの後継者としてつぼみとえりかが新しいプリキュアに選ばれましたが、その初戦を描いた第1話から第3話までの展開にも、アニメ本編にはなかったセリフなどが挟まれていたりします。
そうした中で最も目新しいのは、それをゆりさんの視点から見るということではないでしょうか。
プリキュアとして日々鍛錬を積み、数々の激闘を制し、「傷つくのは自分ひとりでいい」との思いから仲間を作らずひとりで戦ってきたキュアムーンライト。
その目から見ると、ブロッサムとマリンの戦いは非常に危なっかしく、時にいらだたしいものでした。
パートナーの妖精を危険な目に遭わせた際に厳しく後輩を叱責する姿はアニメでもよく見られましたが、特に、シプレとコフレが人質にとられてしまう第10話「最大のピンチ!ダークプリキュアが現れました!」の内容を描いたシーンでは、コロンを失ったゆりさんのこころのうちが痛切に描かれています。
さらに、第13話「真実が明かされます!キュアムーンライトの正体!!」では駅前で起こった騒動のなかでダークプリキュアと月影ゆりが対面しますが、これまでゆりさんとダークプリキュアの内面を描いていたからこそ、それを読んできた読者にはふたりの対峙にアニメ本編とは違った思いを抱かせられるのです。
さらにさらに、ここではダークプリキュアとコッペ様の戦闘シーンがアニメより多く描かれているなど、本編とはひと味違った趣きが楽しめますよ。
第四章は「キュアムーンライトの復活!」。
ここではキュアサンシャインの加入から、ブロッサムたちのプリキュアの試練。
そして、キュアムーンライトが復活するまでを描いています。
このあたりのストーリー進行はアニメとほぼ同じですので、あんまり書くことが少なくなってきます(笑)。
しかしそれでも、アニメでは語られなかったつぼみたちの様子や、ゆりさんの言葉などあって、アニメと同じ流れをなぞりながらも楽しめる内容となっています。
そして第五章「父よ」。
この章では、デザートデビル襲来から、自分たちの影と戦う「プリキュア最後の試練」、そして惑星城でのラストバトルと、アニメ本編の最終回までの物語がしっかりと描かれています。
そしてそして、アニメでは語られなかった最終回の2年後の後日譚まで紡がれているのです。
さらに、砂漠の使徒サイドの話としても、クモジャキー・コブラージャ・サソリーナの3人がこころの花を枯らし、デューンの配下となるまでに至った経緯も描かれています(ハートキャッチらしく、彼らの過去はかなり重たい内容です)。
そのほか、デューンに捕らえられた薫子が惑星城において交わしたサバーク博士との会話。
ダークプリキュアがキュアムーンライトに語った「戦う理由」。
そして、砂漠の王・デューンが地球に狙いを定めることになった、その悲しい過去。
いろいろな新事実がアニメ本編を補完する形で描かれていきます。
その中で、特筆すべきことがひとつだけあります。
どこかで噂を聞いたことがある方もいるかもしれませんが、とある子ども向け雑誌のプリキュア特集の中で、「コッペ様の体内には温泉がある」というとんでもない設定がありました。
戦いに疲れたプリキュアは、コッペ様の体内に入って温泉に浸かり、疲れを癒やすというのです。
実はこれ、この小説の中で出てくるんです!
ダークプリキュアとの決戦をキュアムーンライトが制したあと、デューンが現れてムーンライトとブロッサム、そして月影博士と戦います。
アニメでは、月影博士の命を奪ったデューンにゆりは憎しみを向け、つぼみの叱責によって立ち直ったあと、まずはブロッサムとムーンライトのふたりでデューンと戦い、そのさなかにマリンとサンシャインが加勢する流れになっています。
ところが、この小説ではつぼみの叱責直後にマリンとサンシャインが合流し、デューンは戦いの場をこころの大樹の下に指定すると、一旦姿を消すのです。
すぐにでも最終決戦に挑もうとするムーンライトたちですが、コッペ様がそれを止めます。
まずは体を癒やしてからだと言うのです(本当に、言うんです! 喋るんです、コッペ様!)。
みんなはコッペ様の中へ入り、そこで温泉を見つけ、決戦に向けて英気を養うのですが、この場面は必見ですよ!
いかにゆりさんが成熟した性格を持つ高校2年生とはいえ、自分の「妹」との激闘を終え、ずっと行方を探し続けてきた父を失い、まともな精神状態でいられるはずがありません。
そんな中で、デューンとの最終決戦を控えたゆりさんが、憎しみや悲しみに縛られることなく未来へと目を向けるこの温泉シーン、ぜひご自身の目で読んでみてください。
以上、だいぶ駆け足で小説の内容をご紹介いたしました。
発売直後の本ですので、過去作のあらすじと違ってどこまで書いたらいいものか、大変迷いながら書きました。
読者もあらかじめ知っている内容を描くことになる第三章以降は、アニメにはなかったセリフの差異や追加されたシーンなどが大きな見どころとなるのですが、そこを私が細かく解説してしまうわけにもいきません(笑)。
それでも最低限、楽しみを伝えるためにいくつか小説版独自のエピソードを取り上げましたが、ここで挙げたのはあくまでも一例です。
本作品の中には、こうした「本編では語られることのなかった話」がたくさん散りばめられています。
プリキュアや砂漠の使徒に関する知られざる設定などもどんどん出てきますので、ファンの方なら絶対に読んでおきたい作品ですね。
本当はもっともっと語りたいことがあるのですが、発売直後ということもありますので、この辺でおしまいにしておきます。
それでは、また・・・・・・。
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